APAIE2019の「STUDY in JAPANブース(日本合同ブース)」に出展した団体より、立教大学様に、事前の準備や大会中の活動について、報告書を執筆していただきました。出展の参考事例としてご覧ください。
APAIE2019の「STUDY in JAPANブース(日本合同ブース)」に出展した団体より、立教大学様に、事前の準備や大会中の活動について、報告書を執筆していただきました。出展の参考事例としてご覧ください。
立教大学では、世界各地で開催される国際教育会議(NAFSA、EAIE、APAIEなど)に、ほぼ毎年参加している。なかでもAPAIEには、2008年第3回大会以降参加しているが、2016年大会からは体制を強化してフルブースを出展している。
毎年度、本学の国際化推進に関する重点的課題に応じて、国際化推進担当部局である国際化推進機構内で派遣チームを編成し、各会合に臨んでいる。今回のAPAIEには、国際センターから課長である筆者および交換留学協定・国際交流寮担当職員、そして本学の国際化施策を全学的な見地から推進する国際化推進機構事務局の職員、計3名で参加した。
以下では、2019年3月26日~28日にクアラルンプール・コンベンションセンター(KLCC)で開催されたAPAIE大会に、初めて参加した筆者の感想を中心に報告する。
APAIEをはじめ、本学が国際教育会議に参加する際には、開催期間中できるだけ多くの大学との間に公式のミーティングを実施することを主眼としており、必ずブースを出展している。今回のAPAIEには、筆者のカウントによると約400の大学が参加していた。このうち、本学は、事前に23大学とのミーティングのアポイントをセットし、期間中に入ったアポイント12大学を含め、合計35大学との間でミーティングを行うことができた。
ミーティングは、参加大学のうち、本学と交換留学協定を締結している大学と積極的にセットした。特に、学生交換(派遣・受入)のインバランスが生じている大学については、あらかじめ経年データで分析した本学としての現状認識を先方に直に伝達した上で、お互いの要望や抱えている問題点等について政策と実務の両面からオープンに話し合い、そして共有する場とすることを目指した。直接的なコミュニケーションによって、解決できる問題は少なくない。その場で、改善のヒントを得たり、問題解決に向けた次善策を先方に飲んでもらう「取引」を持ち掛け合うのもブースでの直接交渉の醍醐味だ。
ブース出展のメリットは、まだ他にもある。ブース前に設置した自大学のカウンター陳列した配付・閲覧用資料を目に留めた大学担当者と、その場で名刺交換することが頻繁にあり、場合によってはそのまま面会に発展することも少なくない。今回も、ロシア、リトアニア、ハンガリーなど、本学が当初予定していなかった多様な国々の大学と知り合うきっかけを得ることができた。これらはいずれも、本学と先方大学それぞれの「ブース巡り」によってもたらされた偶然の産物である。
あえて書くまでもないが、上述したメリットを確実なものとするためにも、周到な事前準備が欠かせない。成功するかどうかの大勢は、準備の質で決まるというのが実感である。
今回本学では、面会予定の大学との交換留学状況を、「順調」「停滞」「問題なし」の三種類の基準で事前に自己評価した。そして、これをもとに各大学と面会した際の確認事項を洗い出し、本学からの要望や提案事項等を細かく設定した。さらには、面談のシミュレーションを行い、各大学からの要望や問題提起を日本に持ち帰ってどのように対応するかの方針案もあらかじめ想定しておいた。
これが十分な準備とは思わないが、成果を上げるためには、常に仮説検証型のスタイルで海外大学との面談に臨む姿勢と、それを可能にする具体的な準備が欠かせない。
APAIEに参加する意義を端的に言えば、それは大学のグローバル化のトレンドの最前線を体感できるという点に尽きる。個別の大学との面会はもちろんだが、各国のブースづくりのコンセプト、参加大学や企業のラインナップ、そこで提供される情報、ポスターセッションやワークショップなどのイベントのタイトルを眺めるだけでも、先端のグローバル教育が向かう方向を知ることができる。
また、今回は留学に関する学費等の国際送金決済サービスの企業や国際的な語学試験実施団体など民間関係者から、留学実務について最新の情報を得たり、意見交換することができた。
APAIEは、日本から近い会場で開催されるため、移動の負担を抑えられること、そしてアジア諸国の大学の出展が多く、アジア圏内の交流拡大を図る上でも好機である。
帰国後には、APAIEでの経験を、組織的な経験へと昇華させるため、すべての面談結果を各会議体や学部にフィードバックしている。
近年、EUのERASUMUS+やオーストラリアのニュー・コロンボ・プランなどの留学促進施策にも後押しされ、日本を含むアジア圏への関心はさらに高まっている。大学の国際化、グローバル化を組織的・政策的に推進しようとする大学にとって、APAIEは国際教育業務に関わる大学教職員ひとりひとりが、研鑽を積む場として最適であることは言を俟たない。今回、筆者も、各国の大学アドミニストレータやコーディネーターと議論する中で、問題意識や視点、情報量、コミュニケーション技術で凌駕されるという得難い経験をしたが、これが今後のモティベーションになっている。
また、APAIEに参加するプロセスを振り返ってみると、それは自分の大学が抱える課題や置かれているポジションなどが可視化されていく過程であったことに気付く。その意味でAPAIEは、「商談会」のような枠組みをはるかに超えた、国際化政策のPDCAサイクルを支える役割を果たしているのかもしれない。
どの大学にとっても、このような「学習空間」や「PDCAの実践空間」としてのAPAIEに参加するメリットは大きいと考える。本学も今回のAPAIEで多くを得ることができた。このような場を支えていただいたJAFSA関係者の皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げたい。
報告者:藤枝 聡
(立教大学 国際センター担当課長)
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